ローカルお供え物 大捜査線〜 桟餅(さんもち)の謎を追う
お仏壇にはお供え物である。
お供え物の文化もまた地方によって独特のものがある。
私は京都でお寺のことを学び、東京の本山で修行して函館に帰ってきた。
いざ帰ってきてみると、函館ならではのお供え物の文化もあることに気づいた。
その代表と言えるべきお供え物がこちら。
その名は桟餅(さんもち)
先立たれた大切な方々が、彼岸(極楽浄土・さとりの世界)へ渡るための桟橋をかけてあげるという意味合いでお供えされるようになったと言われている。主に葬儀や法事でお供えする。
私も函館に帰ってきてから初めて知ったお供え物だった。
面白いのが函館の中でもお供えする宗派や地域が偏っていたり、
ローカルの中のローカルなお供え物といえるだろう。
そこで今回、私のTwitterで、
桟餅を知っているか?これは函館だけの文化なのか?
という調査を兼ねて投稿してみたところ、
ありがたいことに多くの回答があり少しまとめてみた。
◎桟餅は全国共通??
まず桟餅の存在自体を知らない方がたくさんいた。
札幌、釧路、十勝、苫小牧、長万部など北海道内でも見たことがないと。
他にも関東、関西、幅広い地域からもコメントを頂いたが、日本各地でも見たことがないとの回答が多かった。
逆に、森町、木古内、函館、北斗、下北半島の辺りではお供えすることが分かった。
↑桟餅を供える地域。こんな感じでしょうか。
やはりこれは函館界隈だけの文化なのでしょう。
更には函館市内の中でもお供えする地域としない地域もあることが分かった。
コメントしてくれた方のおばあちゃんから聞いた話も興味深い。
【小さい頃に聞いた話なので記憶が定かではないけども、旧亀田村と亀田郡の住所の地域で桟餅がお供えに使われてるとか。うちのばぁーちゃんが今の函館西部地区(元町あたり)出身で、嫁いでから桟餅知ったって話してた記憶があります(*^^*)】
とのこと。始まりは旧亀田村、亀田郡の文化だという説。
そして、むつ市の葬儀社の方からはこういうお話も。
【下北では「さん切り餅」としてお供えする地域がありますよ。同じ意味だと思いますが、もっと平らな大きな切り餅みたいなものを井桁に重ねる所も……。最近はその形で砂糖を真空パックしたものを使ったりしてます。まだまだ色んな共通点ありそうですねぇ】
とのことで、青森県の文化から函館に伝わったという説。
結論は分かりませんがどちらにしてもかなり長い歴史がありそうですね。
ちなみに地元の老舗の餅屋さんに聞いてみたところ、
50年以上前からあったという。
◎宗派による違い
またTwitterに寄せられたコメントを見ると、
道南や下北半島の曹洞宗、日蓮宗、真言宗、などの宗派でよくお供えするそうだ。
ちなみに浄土宗である湯川寺ではお供えする事はない。浄土真宗でもお供えする事はない。
その違いとしては、教義の違いもあると思う。
葬儀が良い例だが、浄土宗や浄土真宗の場合は、
南無阿弥陀仏のお念仏を称えて、
阿弥陀様が直々に極楽浄土へ導いてくれるので、
橋をかける必要が無いからではないかなと推察する。
これはあくまでも私の予想。
◎ローカルお供え物は全国にある
他にも面白い話も色々聞くことが出来た。
大阪の方では、桟餅ではなく、笠餅という文化があるそうだ。
それを教えてくれたのは勝野光栄さん。
【大阪のお寺に居た時は傘餅を供えていました。 子餅を7個×7段重ねて1番上から大きな円形ののし餅を乗せます。 法要が終わった後にのし餅を人の形に切り分けていました。】
私も初耳の情報でした!
図で意味も説明してくれましたのでご覧ください。
まだまだ調べていくと全国各地にはその地方だけのお供え物や風習がありそうだ。
どんなお供え物にも、背景には故人のことを大切に思うからこそ、
お供え物をあげたいという心があると思う。
意味が分かると、お供え物の見方も変わることでしょう。
お供え物をあげることで供養するという表現がよくあるが、
供養とは【供物養心】の略である。
物をお供えするだけでなく、
大切な方のことを思い、心を込めて何か施しをしてあげたい。というような優しい気持ちを仏前にお供えして、自分自身も心優しい仏様のような人になっていくような生き方を【供養】というのです。
心を込めて先祖と仏様にお供えをしましょう。
それが自分の優しい心を育てることにも繋がります。
あなたの街にはどんなお供え物がありますか?